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筑摩選書

乱歩とモダン東京

——通俗長編の戦略と方法

定価

1,650

(10%税込)
ISBN

978-4-480-01727-7

Cコード

0395

整理番号

209

2021/03/15

判型

四六判

ページ数

240

解説

内容紹介

江戸川乱歩はこれまで、1920年代の初期本格推理ものや、人間の内奥を描いた短篇、あるいは晩期の少年探偵団シリーズのような児童向け作品が評価されてきた。だが乱歩の作品は、同時代においては、本人が「通俗もの」と読んでいた「通俗長篇」で圧倒的な人気を集めた。『蜘蛛男』(1929)に始まる『黒蜥蜴』『魔術師』『吸血鬼』『人間豹』『黄金仮面』のような怪人対名探偵明智小五郎の冒険活劇である。こうした通俗長篇を、世のミステリファンは否定し、乱歩自身も通俗長篇が世に受け入れられたことを極度に恥じていた。だがそれは、日本の文学批評の「通俗もの」蔑視の風潮を、乱歩が内面化したものに過ぎず、乱歩の魅力はむしろ通俗的作品群にこそある――そう信じる著者は、世に受け入れられようとした乱歩の戦略の勝利こそが、乱歩を後世に残る作家にしたと考える。そしてその戦略の勝因は、大衆読者のあこがれをかきたてるような1930年代のモダン東京のはなやかな部分を見事に作品展開に生かした点にこそある、とする。通俗娯楽長篇を再評価し、そこに都市の魅力を盛り込みつつ大衆の心をつかんでいった、江戸川乱歩の知られざる戦略を解明する。

目次

通俗長編と『探偵小説四十年』
あこがれの文化アパート
帝都復興と昭和通り
京浜国道のカーチェイス
遊園地の時代―鶴見遊園と花月園
巨大ランドマークの迷路―国技館
プチホテルの愉楽
モダン文化住宅の新妻
大東京の郊外
“近代家族”の誕生
戦略としての土蔵
乱歩邸が乱歩のものとなるまで

著作者プロフィール

藤井淑禎

( ふじい・ひでただ )

藤井 淑禎(ふじい・ひでただ):1950年生まれ。立教大学名誉教授。立教大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専門は近現代日本文学・文化。著書『乱歩とモダン東京』(筑摩選書)、『純愛の精神誌』(新潮選書)、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『漱石文学全注釈――こころ』(若草書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)、『水上勉』(名古屋大学出版会)など。

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