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ちくま新書

ヤクザと日本 

——近代の無頼

定価

858

(10%税込)
ISBN

978-4-480-06396-0

Cコード

0236

整理番号

702

2008/01/08

判型

新書判

ページ数

272

解説

内容紹介

ヤクザとは何者なのか?法の支配がおよばない炭鉱・港湾などの最底辺社会に生きた者たちが、生きんがために集まり発展したのが近代ヤクザの始まりといえる。彼らの存在が日本社会の近代化を下支えしたという現実。日雇い派遣、ワーキングプアなど、あらたな下層社会が形成されつつある今こそ、ヤクザの歴史を振り返ることで、現代社会の亀裂を克服する手がかりがみつかるにちがいない。

目次

序章 ヤクザ観の相剋
第1章 ヤクザの源流―カブキ者から博徒まで
第2章 近代ヤクザの成立―川筋から、港から
第3章 親方・子方関係とヤクザ―下層労働力統括者としての近代ヤクザ
第4章 ヤクザと芸能の世界―周縁仲介者としての近代ヤクザ
第5章 ヤクザと近代国家―社会的権力としての近代ヤクザ
第6章 義理と人情、顔と腹―日本的社会関係と近代ヤクザ
第7章 山口組概略史―近代ヤクザの典型

著作者プロフィール

宮崎学

( みやざき・まなぶ )

1945年京都生まれ。父は京都のヤクザ初代寺村組親分。早稲田大学中退。在学中は日本共産党系の学生運動に参加、対立する新左翼諸党派との武力衝突を最先頭で指揮。その後、実家の稼業である建築解体業や雑誌記者などをへて、1996年、自伝的作品『突破者』でデビュー。主な著書に『ヤクザと日本』(ちくま新書)、『近代ヤクザ肯定論』『暴力団追放を疑え』(以上、ちくま文庫)、共著書に『「暴力団壊滅」論』(筑摩書房)などがある。

この本への感想

著者の宮崎 学の「立ち位置」は作家・司馬遼太郎と全く逆だ。

日本の国の各時代を、それがどんな時代でも、格好悪くとも、何とか生きていかねばならない下層民の目で見ていく。例えば、戦国時代のオリジナルな「武士道」は、新渡戸稲造が言う、武士が公務員化した時代の「武士道」とは違うことを述べている。

本来の武士道は、近世ヤクザの「任侠道」と同じであったと。そしてその「任侠道」も近代ヤクザになって変わらざるを得なくなったとも。時代と国家のありようの変化が、ヤクザの存在を変容させていく。そしてカタチを変えながら人の世にヤクザ機能は内在していく。

学校で習った日本史の時間は、縄文・弥生や平安・室町あるいは徳川時代までで、三学期になった頃教科書が入る明治大正昭和の近代史は駆け足で飛ばすか、「時間がなくなったので後は自分で教科書を読んでおいてください」、で終った。

子供に聞くと彼らも同じだったと言う。自国の歴史、特に近現代史に疎い国民をつくる。占領軍のこの占領政策の眼目の一つは今も成功をおさめているような気がする。(国は自国語と歴史で継続していく。自国の歴史を知らない国民が住む国は独立国とはいえない)。その近現代史を司馬遼太郎から学んだ・・。
 とはいえ、彼の「立ち位置」は、「国民国家」の為政者側の立ち位置だ。それはある意味、敗戦国があらゆる階層の国民の力により、猛烈な勢いで復活していく時代の勢いが要請したものでもあるのだろう。

しかし、日本人の数から言えば、彼の「立ち位置」ではない「立ち位置」にいる日本人の方が圧倒的に多い。つまり“赤紙の召集令状一枚”で日常生活から突然引き剥がされる階層に所属する人間と、召集する国家側の人間の「立ち位置」の違いだ。司馬遼太郎は後者の「立ち位置」からの国民文学を彼の司馬史観で書いてくれた。

宮崎 学は、違う面から日本を見ている。
彼は言う、土建業、港湾荷役、火消し、目明し、芸能・・、日本人の歴史には、いわゆるヤクザ稼業というものは、必然であったし、暴力装置というのは権力にも反権力にもカタチを変えつつ今も機能していると。

歴史に裏側だけも表側だけもない。上流も下流もない。それらを全て含んだ全面が一国の歴史になっている。

目からウロコの本ではあるが、後半の山口組の叙述の部分は、同じ作者の「近代ヤクザ肯定論 山口組の90年」があるせいか、この本では粗っぽい内容に思えた。

阿智胡地亭 辛好

さん
update: 2008/02/29

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