若狭徹
( わかさ・とおる )1962年長野県生まれ、群馬県育ち。明治大学文学部考古学専攻卒業。国史跡保渡田古墳群の調査・整備、かみつけの里博物館の建設を担当。高崎市教育委員会文化財保護課長を経て、現在明治大学文学部准教授。博士(史学)。藤森栄一賞・濱田青陵賞・古代歴史文化賞を受賞。著書に、『もっと知りたいはにわの世界』(東京美術)、『東国から読み解く古墳時代』・『前方後円墳と東国社会』・『古墳時代東国の地域経営』(いずれも吉川弘文館)ほかがある。
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3世紀には単純な円筒型だった埴輪は、歴代王の古墳のモデルチェンジにつれ、器財形・家形・動物形そして人物型へとバリエーションを拡充した。それを古墳に並べて王の治世における複数のシーンが再現される。水の神をまつる祭祀、猪狩・鹿狩・鵜飼・鷹狩ほかの狩猟などなど。治水や狩猟は、実際的な効用と同時に、王の権能を内外に示す重要な催事でもあり、武装・盛装した王の埴輪はその軍事力を誇示し、馬型埴輪は豊かな国力を象徴している。埴輪による各シーンは、ちょうど絵巻物のように一本に複合されビジュアル化され、いわば王権絵巻のインスタレーション版のように、王の治世と権勢を物語っている。一方で埴輪は、社会状況も語っている。大量で多様な埴輪の生産は、拡充された生産システムや工人組織の存在と、社会の上層から下層にいたるまで、そんなものを作ることが許された<ゆとり>があったことを推定させる。やがて、王個人のマンパワーによる社会経営が終焉すると、埴輪は古墳とともに消滅し、よりシステマティックな王権と官僚機構への国家形成へと社会は移行していった。
古代史のなかでも人気のトピックスを軸に日本の古代社会の隠れた姿に迫る。
第1章 埴輪を発掘する
第2章 埴輪はどのように発展したか―三五〇年の歴史
第3章 見せる王権―人物埴輪の群像
第4章 埴輪の登場人物たち
第5章 埴輪づくりを支えた仕組み
終章 埴輪は語る―歴史の必然
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