中村きい子
( なかむら・きいこ )1928年、鹿児島生まれ。サークル村運動に参加しながら、「思想の科学」に母をモデルにした本作「女と刀」を連載し、1966年に出版。同作は、第七回田村俊子賞を受賞し、1967年に木下恵介監督、山田太一脚本によりドラマ化された。他の著書に『わがの仕事』(思想の科学社)がある。1996年没。
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薩摩藩の士族の娘として育ち、逆境を生き抜いた一人の女性(作者の母がモデル)を描いた小説。九州の女性たちの聞き取りをしてきた作者だけあって、描写に真実味があり、薩摩の武士=士族の家の時代を通しての変遷や、旧来の男尊女卑がどんなものだったかがわかる。何よりも、逆境の中で矜持を持って生き抜いた主人公の鮮烈な描写が胸を打つ。ものすごい生き様である。士族の娘としてプライドをもちながら、自分を愛してもいない男のもとに嫁いだ後、己の才覚をもって商売をして生き抜き、多くの子を育て、因習や世間体や夫に囚われず、常に己の心に忠実に、独立の矜持を保ち続けた女の一生。田村俊子賞を受賞し、ドラマも評判を呼んだ。
士族の暮らしなど歴史に関心がある人にも、フェミニズム的な関心がある人にも訴える一冊といえる。「三度読んでなお、私にとって不思議な力をもつ作品である……この作品は、自主刊行に入ってからの『思想の科学』のもっとも重要な成果の一つ」(鶴見俊輔)
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