志賀健二郎
( しが・けんじろう )1950年生まれ。京都大学文学部卒業後、小田急百貨店に入社。長年文化催事に携わる。小田急美術館館長。川崎市市民ミュージアム館長を経て、田中千代ファッションカレッジ校長。
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1962年に開業した小田急百貨店は、紛れもなく新宿駅西口の顔だった。当時、新宿副都心はまだ計画でしかなく、やがて生まれる高層ビル街へ向け、副都心への玄関口として百貨店ビルは構想された。ビルは西口広場という開発のシンボルを抱えるように建てられた。
日本最初の百貨店である三越以来、日本の百貨店は販売を目的としない文化催事(展覧会)を数多くてがけ、都市の文化インフラとして機能してきた。小田急も例外ではない。1967年の本館開店時には、百貨店としてはいち早く「文化大催物場」という展覧会専用のスペースを設けていた。百貨店の展覧会は、美術館展示に比べ、時代の世相を色濃く反映するものだが、小田急の企画は相当アグレッシブだった。電車そのものを解体して展示会場まで運んだり、「刺青展」や狂言役者そのものを展示してしまうなど、その自在さ、多様さはまさに清濁併せのむ新宿という街を映し出すものであった。
小田急百貨店で展覧会事業に深く関わった当事者が、百貨店の展覧会を切り口に戦後の新宿と百貨店の歴史をたどり直す。2022年9月で営業を終了し、解体が決まった小田急百貨店ビルへのオマージュを込めた一冊。
第1章 小田急百貨店の開業
第2章 本館開業と文化大催物場
第3章 高度成長と若者の時代に
第4章 バブルの時代の文化戦略
第5章 宴の終わり
第6章 新宿西口考―「夢」の再開発
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