多田一臣
( ただ・かずおみ )1949年生まれ。二松學舍大学特別招聘教授、東京大学名誉教授。専門は日本古代文学。著書に、『古代文学表現史論』(東京大学出版会)、『大伴家持』(至文堂)、『上代の日本文学』(放送大学教育振興会)、注釈書に、『日本霊異記』上・中・下(ちくま学芸文庫)、『万葉集全解』1~7(筑摩書房)、編著書に『万葉語誌』(筑摩選書)などがある。
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教科書のWebサイト「国語通信」で『万葉樵話』と題して令和元年5月より月1回、10回にわたって連載されたものに加筆修正を加えて一冊に纏め直すもので、全15章と番外編からなる。『万葉集』を軸としながらも、広く古典文学一般に関する教養的内容となっており、いずれも興味深い話題ばかりである。例えば『万葉集』と言えば「ますらをぶり」と言われるが、それは一面的に過ぎないことや、「枕詞は現代語訳しないでよい」と教える高校現場での指導の愚を指摘する。また『万葉集』の時代には猫はいなかったとを指摘するなど、国語の授業の枕にも適した話題が多く綴られている。さらに今まであまり語られることのなかった『万葉集』と「怨霊」との関わりについて述べられた「番外編」は、『万葉集』への新たな興味を喚起する。近年話題の「古典を学ぶ意味」についても、著者なりの考えを示し、高校国語教師を主要な読者と想定しながらも、広く一般の『万葉集』愛読家にも新たな『万葉集』の魅力を提示する一冊となっている。書名につけた「樵話」とは、著者によれば「熟さぬ言葉だが、鬱蒼とした万葉の森に分け入って、その木を伐り出す意を含ませた」とのことである。
新元号「令和」と『万葉集』
『万葉集』は「国民歌集」か
『万葉集』は素朴か
宮廷社会の特異なありかた
恋とは何か
僧の恋
和歌の表現の本質
旋頭歌はおもしろい
非正統の万葉歌―巻十六の世界
『万葉集』の歌にはなぜ敬語があるのか
暦について
万葉びとと山
『万葉集』の無常観
酒の歌
『万葉集』に「猫」はいない“付・猫の文学史”
怨霊譚三題
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