浜本隆志
( はまもと・たかし )浜本隆志 (はまもとたかし):1944年香川県生まれ。関西大学名誉教授。ワイマル古典文学研究所、ジーゲン大学留学。博士(文学)。ドイツ文化論・ヨーロッパ文化論専攻。著書に『「窓」の思想史』(筑摩選書)、『拷問と処刑の西洋史』(新潮選書)、『魔女とカルトのドイツ史』(講談社現代新書)、『バレンタインデーの秘密』』(平凡社新書)、『ナチスと隕石仏像』(集英社新書)、『図説 ヨーロッパの紋章』『図説ヨーロッパの装飾文様』(ともに、河出書房新社)などがある。
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「ハーメルンの笛吹き男」伝説を扱うのはひとつの冒険である。阿部謹也氏の同名書を超えるものは、もはや日本では生まれないと言われてきたからだ。突然、130人の子供たちを失った人々の悲しみ、著者のこのテーマに寄せる情熱、精緻な文献調査、学者としての良心がひしひしと伝わり、感動がふたたび呼び起こされる。阿部氏の本では「笛吹き男」伝説の真相は、歴史の闇に隠れ、決定的な新資料が出現しないかぎり、解明することは困難であるとされてきた。本書では二つの視点から伝説の本丸に攻め込む。ひとつは、事件の起きた日にちの問題である。事件が「ヨハネとパウロの日」(1284年6月26日)に発生したことになっているが、本当にそうであったか。もうひとつはなぜこの事件が発生したのかという問題である。これまで失踪原因には、諸説が展開されてきた。近年の研究動向では、事件はロカトール(植民請負人)の東方植民のリクルートによって発生したという説がほぼ定説となってきた。本書はさらに「笛吹き男」伝説が、究極的にはヒトラーのナチズムで注目されるようになった東方植民政策と、根の部分で深くつながっていたのではないかとも問う。
序章 「笛吹き男」ミステリーの変貌
第1章 「笛吹き男」伝説の虚像と実像
第2章 事件に関する諸説
第3章 ハーメルンで起きた事件の検証
第4章 ロカトールの正体と東方植民者の日常
第5章 ドイツ東方植民の系譜
第6章 ドイツ帝国(一八七一‐一九一八)の植民地政策
第7章 ナチスと東方植民運動
第8章 「笛吹き男」とヒトラー
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