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ちくま学芸文庫

唯脳論

人工物に囲まれた現代人は脳の中に住む。脳とは檻なのか。情報器官としての脳を解剖し、ヒトとは何かを問うスリリングな論考。 【解説: 澤口俊之 】

定価

1,034

(10%税込)
ISBN

978-4-480-08439-2

Cコード

0147

整理番号

-5-1

1998/10/08

判型

文庫判

ページ数

288

解説

内容紹介

文化や伝統、社会制度はもちろん、言語、意識、そして心…あらゆるヒトの営みは脳に由来する。「情報」を縁とし、おびただしい「人工物」に囲まれた現代人は、いわば脳の中に住む―脳の法則性という観点からヒトの活動を捉え直し、現代社会を「脳化社会」と喝破。さらに、脳化とともに抑圧されてきた身体、禁忌としての「脳の身体性」に説き及ぶ。発表されるや各界に波紋を投げ、一連の脳ブームの端緒を拓いたスリリングな論考。

目次

唯脳論とはなにか
心身論と唯脳論
「もの」としての脳
計算機という脳の進化
位置を知る
脳は脳のことしか知らない
デカルト・意識・睡眠
意識の役割
言語の発生
言語の周辺
時間
運動と目的論
脳と身体

著作者プロフィール

養老孟司

( ようろう・たけし )

1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

この本への感想

 私は、今からちょうど1年前、去年の今ぐらいの時期に、脳出血で倒れました。カルテには「左被殻出血」「右片麻痺」「失語症(全失語)」の文字が並び、以後それらの言葉が、「私」という人間を表す言葉となりました。
 

 ぴくりとも動かず(動かせず)、これまで通り動く左半身に、ただダラーンと「くっついて」いるだけの右半身。自分が自分であり、他人が他人であることもわかり、今自分が病院にいることもわかり、倒れる前と同じように生じて来る思いも、感情も、意思もあるのに、それを何一つ他者に伝達可能な形で外化し、表現することのできない頭(脳)、口、そして、手。

 1年前の私は、この世界に左半身だけで「引っ掛かって」いるだけの人間でした。そんな状態だった私を再びこの世界に戻してくれたのは、偶然の本との出会い、すなわち、私がたまたま20年前に出会っていた、この養老孟司先生の『唯脳論』だったのです。

 先生が書かれていたことは、「ほんとう」でした。

 もちろん、病院の先生も本当に親身に対応して下さいましたし、また、ほとんど毎日と言って良いほど私のリハビリテーションのために時間を費やして下さったPT(理学療法士)OT(作業療法士)ST(言語聴覚士)の先生方のことは、これから先の人生で、忘れることはないでしょう。

 しかし、私を再びこの世界に戻して下さったのは、間違いなく先生であり、先生が書かれたこの『唯脳論』でした。

 私は、先生のこの『唯脳論』という御著書に、「救われた」者です。

 もしかしたら、この「救われた」という表現は大袈裟に響くかも知れません。あるいは、本当に大袈裟であるのかも知れません。そして残念ながら私には、それを判断するための「基準」がありません。しかしこれだけは言えます。私は先生のこの御著書に、変わることなく今も、「救われた」と感じているのだ、と。

梅津(FTM)

さん
update: 2016/09/20
ものすごい本
何度読んでも、理解できないところがまだ、沢山残っていますが、この本は、ものすごい本だということは分かりました。
新しいことをこの本で述べるつもりはない、とか、私の知ったことではない、とかいう言葉は面白かったです。

この本の最後の予測、人間は自分の身体以外全て人工化、脳化していく、というのが、本当になりそうで怖いです。
しかし、人の安全、便利、とかを追及するとそうなってしまうので、なかなか人工的に止めるのは難しいのかもしれません。
しかし、自然なしの環境で生活するのも頭がおかしくなりそうです。
超人が誕生したり、人間の中の真の頭、体の賢い人とかが集まったら解決できるかもしれませんが、¥。

いたる

さん
update: 2010/05/08

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