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ちくま文庫

生きていく絵

——アートが人を〈癒す〉とき

定価

990

(10%税込)
ISBN

978-4-480-43856-0

Cコード

0171

整理番号

-66-1

2023/01/10

判型

文庫判

ページ数

280

解説

堀江 敏幸

内容紹介

絵を描くことで生きのびる。描かれた絵に生かされている。東京・八王子市の丘に立つ精神科病院、平川病院にひらかれた〈造形教室〉。ここでは心の病を抱えた人たちがアートを通じた自己表現によって、自らを癒やし、自らを支えるという活動をしています。とはいえ、これは「芸術療法」や「アートセラピー」のように、表現された絵を医療的に解釈したり、診断に活用するといった活動ではありません。つまり、「治す」ことは目的ではないのです。本書では〈造形教室〉の取り組みと、4人の作家の作品と人生から、表現と人間の関係について考えます。
「一人の人間が、病みつかれた心を一枚の紙のうえに描くことに、果たしてどのような意味や可能性があるのか」を探り、きちんとした言葉で説明すること。著者・荒井裕樹さんが目指したのは、もっとシンプルでもっと根源的なことでした。
作品そのものと、作者の人生にひたすら向き合うことで見えてくる〈生〉のありかた。それは、おそらく誰にとっても無縁ではない〈生きにくさ〉を照らしだし、そのなかでの〈癒し〉の可能性を示すものになっているはずです。代表的な8作品をカラーで紹介。解説 堀江敏幸

目次

はじまりの章
第1章 “癒し”とあゆむ(安彦講平)
第2?ヘ “病い”をさらす(本木健)
第3章 “魂”をふちどる(実月)
第4章 “祈り”をちぎる(江中裕子)
第5章 “疼き”をほりおこす(杉本たまえ)
まとめの章
あとがき さりげなく、やわらかな言葉のために

著作者プロフィール

荒井裕樹

( あらい・ゆうき )

荒井 裕樹(あらい・ゆうき):1980年東京都生まれ。二松學舍大学文学部准教授。専門は障害者文化論、日本近現代文学。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。著書に『隔離の文学――ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、『障害と文学――「しののめ」から「青い芝の会」へ』(現代書館)、『障害者差別を問いなおす』(ちくま新書)、『車椅子の横に立つ人――障害から見つめる「生きにくさ」』(青土社)、『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)、『凜として灯る』(現代書館)、『障害者ってだれのこと?――「わからない」からはじめよう』(平凡社)などがある。2022年、「第15回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。

寄せられたコメント

人が人として〈生〉を実践していくうえで必要なことがらを示唆する存在の痛点。そこに触れる勇気が、紹介された人々と共有されているからこそ、全篇に、よい意味でのためらいをともなった明るさの兆しが見えるのではないだろうか
──

堀江敏幸

さん
痛み、苦しみを前にしてアートに何ができるか。この問いを粘りづよく考える上で、芸術の力を過信せず、過度に期待もせず、けれど絶望もせず、シニカルにも ならず、ためらいがちの楽天を失わない、「期待」ではなく「希待」の姿勢に貫かれた本
──

柴田元幸

さん
患者に固有の歴史があることを認め、個人に接近していくことで、どん底から這い上がるような「生きるだけでも精一杯」「肯定も否定もできない生」への共感を可能にしてしまった。読後の不思議な爽やかさはここからきている
──

川口有美子

さん

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