藤谷治
( ふじたに・おさむ )藤谷 治(ふじたに・おさむ):1963年生まれ。小説家。日本大学芸術学部映画学科卒業。会社員を経て、東京・下北沢に本のセレクトショップ「フィクショネス」を経営。『いつか棺桶はやってくる』(2008年)三島由紀夫賞候補、『船に乗れ!』(2010年)本屋大賞第7位。『世界でいちばん美しい』(2014年)織田作之助賞受賞。『睦家四姉妹図』『燃えよ、あんず』『ニコデモ』などがある。
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睦昭(むつあきら)の買った二階建ての建売住宅は原宿にあった。ただし渋谷区ではなく横浜市戸塚区の原宿である。同じ原宿でもここは都市通勤者のベッドタウンで、見るべきものは特にない。横浜や藤沢への車道のアクセスはいいが、車のない学生などにはバスしか移動手段がない。
昭と妻・八重子との間に生まれた四姉妹、貞子・夏子・陽子・恵美里がそれぞれのキャラクターに合わせて、さまざまに泣き笑い怒り喜びながら成長していくさまを、八重子の誕生日である1月2日に家族が集まって記念写真を撮るのを定点観測的に捉え、昭と八重子が老いと病から生活の便がよい埼玉の公団住宅に転居し、睦家が最終的に取り壊されるまで、昭和の終わりから平成の30年間に亘る庶民の姿を通して、日本の、世相の変化を描く。
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