ほしおさなえ
( ほしおさなえ )1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。
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アラフォーで学術系の出版社で編集者をしている蓉子は母と二人暮らし、めざましいことも起きないが特段の不満もない起伏のない毎日を送っている。あるとき、仕事で三田に出向いたおり、近所の幽霊坂に家族三人で住んでいたことをふと思い出す。蓉子が幼いとき離婚し、五年前に亡くなった父は引っ越し魔で、かつ坂のあるところにしか住まない変人だった。なぜか別れた妻ではなく蓉子に都度引っ越し先を知らせてきた父。ひょっとしたら父は娘になにか伝えたかったのだろうか。蓉子は父が住んだ坂を訪ね歩くことを思い立つ。なぜ父は母と結婚し、なぜ蓉子をもうけ、なぜ別れたのか。そもそも父はなにを考えて生きたのだろうか。
「東京の坂で、のぼり坂とくだり坂、どっちが多いか」といういつかの父の問いかけの答えはもちろん「同じ」だけれども、父はずっと坂をくだっていくような人生ではなかったか。坂の数だけ、ひとの数だけ、のぼりもすればくだりもする人生がある。坂の町、東京の襞に沿うようにして、そこに存在するさまざまな風景を、さまざまな時間を、父を追いながら蓉子が経巡るgo to お散歩小説、ここに開幕。
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